日本文化が育んできた格好良さを研ぎ澄まし、アートとして表現するパフォーマンス、それが「藝武」。
日本の武道の洗練された「動き、リズム、精神性」をアートとして表現する、独自のパフォーミングアート「藝武」を展開している、株式会社ORIENTARHYTHMのサカクラカツミさん(以下、敬称略)に、そのネーミングに込められた想いを聞いてきました!
伝統空手の「身体の使い方」「リズム感」「精神性」を活かしたオリジナルスタイルダンス
特許庁:今日はよろしくお願いいたします!まずは、サカクラさんの活動について教えていただけますか?
サカクラ:オリジナルのダンススタイルをつくり、約35年前からパフォーミングアーティストとして活動しています。25年前からは、「ORIENTARHYTHM」というグループでの活動となり、主に舞台上のパフォーマンスを行っており、舞台の構成・演出・振り付けなども行っています。
特許庁:どのように独自のダンススタイルをつくりあげていったのですか?
サカクラ:20代の頃は、アメリカのHIPHOPダンスに夢中で、日本がダサいと思っていて。でもあるとき、黒人の有名なダンサーに言われたんです。「日本にはかっこいい文化がたくさんあるのに、なんでそれを取り入れないのか?」と。そこからですね。日本のかっこよさを深掘りしていったとき、元々やっていた空手の中に「美」があることに気がつき、追求していった結果、生まれたものです。空手が伝わっていく中で研ぎ澄まされた結果残った、「身体の使い方」、「リズム感」、そして、「精神性」。そこを表現していきたいと思っています。
「名前がないものは広がらない」をきっかけに、自分の想いを体現する独自のネーミングを。
特許庁:ダンススタイルに名前をつけようと思ったきっかけはありますか?
サカクラ:いつも事業を相談していた人に「名前がないものは広がらない」とアドバイスをもらったのがきっかけです。「単にかっこいいことをやりたいだけでなく、社会貢献として捉えているなら、名前をつけた方が良い」と。自分のパフォーマンスを生きる活力にしてくれる人がいるのを実感していたので、言葉が響きました。
特許庁:ネーミングはどのように行っていったのですか?どなたかと一緒に考えていったのでしょうか?
サカクラ:1人で考えました。他にないもので、造語にしたいという思いはあって、世界に広めるためには、英語がいいのか、漢字がいいのか。音の響きにもこだわりながら、自分がやっていることを精査していき、たどり着いたのが「藝武」の名前です。自分が表現したいものをまさに体現する名前ができたと思っています。
特許庁:特にこだわったところはありますか?
サカクラ:「藝」の漢字は、よく使われる「芸」の漢字の旧字体と思われる方も多いですが、実は意味が異なるんです。「藝」の文字には「種を植える」という意味があります。明治時代に「art」の語を訳すときに、「徐々に気持ちの中になにか芽生えるもの」、「人の心に種を植え込むもの」ということで「藝術」と訳されたそうですが、自分も同じような気持ちで「藝」の漢字をこだわって使っています。
また、横書きだと右から「武藝(武芸)」と読まれて一般名詞のように捉えられてしまうおそれがあったので、ロゴは縦書きにして作成しました。
特許庁:名前をつけて良かったことはどんなことですか?
サカクラ:他の人が自分のダンスのことを「オリジナルスタイル」と言うのではなく、「藝武」として呼んでくれる。 そこは嬉しかったですね。インターネットで検索するときにも、「藝武」と検索すれば、自分のものがトップにでてくるのも非常に大きい効果だと感じています。
コピーされる怖さを経験したからこそ、しっかり商標登録。仲間を増やすためにも重要。
特許庁:商標登録しようとしたきっかけは、なにかあったのでしょうか?
サカクラ:こだわって考えた名前なので、自分の作品のように思えて。他の人に取られてしまったら、どれだけ後悔することかと思い、商標登録することにしました。以前、自分が考えたパフォーマンスの名前がいろんな人に使われてしまって、誰が考えた名前かわからなくなってしまい悔しい思いをした経験があったので、しっかり守らなくてはという気持ちもありました。
「自分がオリジナルですよ」って言えることがとても大事。それによって、似たようなことをやりたい人を取り込んで、仲間を増やしていくこともできるという効果もあると考えています。
特許庁:出願はどのようにされたんですか?
サカクラ:商標登録については完全な素人で、面倒くさい、敷居が高いものと思っていたのですが、知財総合支援窓口に電話してみたところ、こちらの悩みをくみ取って話を聞いてくれたのが非常に良かったです。ダンスのジャンルとして名前を登録したかったので、商品やサービスとの関係で登録しなくてはならないというのが初めは難しかったですが、「上演」するサービスとして捉えれば良いというのを聞いて、安心して出願しました。
登録になったときは、すごく嬉しかったです!みんなで喜びましたし、登録証は額に入れて飾ってあります!
特許庁:商標登録、やってみてどうでしたか?
サカクラ:一番大きかったのは安心感ですね。登録になるまでは、真似されないように他で使うのは辞めようね、と話していました(笑)大手を振って使えるようになったのは、大きな変化です。
パフォーマンスを通じて日本の伝統文化の良さを伝え、世界の人々の人生を豊かに。
特許庁:最後に、これからやってみたいこととか、目指していることがあれば、聞かせてください。
サカクラ:「藝武」というスタイルには、日本の精神性を採り入れているが、自分の中ではまだうまく表現できていないと思っています。でも、うまく表現できるようになったら世界中の人が共有できると考えています。いま、経済的・物質的支援ではうまくいかないこともある中で、世界の人々の人生を豊かにするものが日本の伝統文化にはある、ということを信じています。「相手をいたわる気持ち」や「和をもって貴しとなす」というところに戻って、それが世界に伝わっていくと、世の中が良くなっていくのではと。「藝武」のパフォーマンスを通じて、そんな日本の伝統文化の良さを伝えていきたいと考えています。
株式会社ORIENTARHYTHM
<主な登録商標>
第6670024号